ニューズレター

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2018年3月25日発行

縁は異なもの! バスツアーの出会いから生まれた一冊

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左・石田三成研究家 田附清子さん、中央・著者 矢的竜さん、右・細江正人

 3月の本会議が終わり、あと数日で新年度が始まります。この束の間の話題として、あえて政務から離れた活動を選んでみました。
 去る3月22日、新潮社から石田三成を主人公とする単行本、『三成最後の賭け』が発売されました。著者は地元の古沢町に住む矢的竜(やまとりゅう・ペンネーム)さんです。
 私は縁あって、その出版のお手伝いをして参りましたので、裏話を含めて紹介させていただきたいと思います。

偶然の出会い

 矢的竜さんとの初対面は4年前の平成26年6月15日のことでした。
 彦根城博物館友の会が主催するバスツアーに参加して堺市に出向いたとき、たまたま隣同士の席に座ったのが矢的竜さんでした。
 矢的さんが、学生時代を過ごした第二の故郷を終の棲家と決め、東京から転居してきたと聞いて、彦根を選んでもらったことに心から嬉しくなりました。さらに歴史時代小説を執筆していると聞き、すかさず「あなたの本棚天晨堂ビバシティブックセンターに並べたい」と申し出ておりました。
 それから一年一作のペースで矢的さんの小説は発売されましたが、活字離れによる出版不況と時代小説の不調が重なったこともあり、売れ行きは伸び悩んでいたようです。

そして昨年

 『三成の長編を書き上げたが、出版社が見つからない。せっかくの原稿が埋もれてしまう』
矢的さんが弱音を吐いたので、私の方から「新潮社に打診してみましょうか」と、お誘いをかけたのです。
 飛びつくかと思った矢的さんは、最初は消極的でした。『出版業界トップの新潮社が、持ち込み原稿を検討してくれるとは思えない。また構成、文章力にも高いレベルを求める相手ゆえ、ボツになる可能性が高い。自分はともかく細江さんの御顔を潰すようなことはしたくない』と言われていました。
 新潮社の佐藤隆信社長とは天晨堂2代目の私と、3代目の長男を交えて、個人的にもお付き合いがあったことから書店経営から退いた今も気軽にお付き合いしています。そういう間柄なので矢的さんの気遣いは無用でしたが、無理強いもできないので静観することにしました。
 ひと月ほどして矢的さんから、『このまま作家生命が尽きるのを待つより、ダメ元で新潮社にトライしてみたい』との意思表明がありました。
 私は直ちに紹介状を用意し、原稿と一緒に佐藤社長に送付しました。
 案ずるより産むが易し、という諺がありますが、新潮社の結論は予想より随分速く届きました。2週間もせぬうちに出版の方向で動く旨の朗報が届いたので、とり急ぎ矢的さんにお知らせしました。

小説の中味

 佐和山城主として善政を行ったといわれる三成ですが、歴史上の人物像はひどいものです。秀吉の寵臣であることを笠に着て傍若無人に振る舞い、同輩を讒言する悪癖もあって周囲から毛嫌いされていたとされています。中でも不利な材料は、関ケ原合戦で敗れたのに潔く死ぬどころか、部下を見捨てて山中の洞窟に身を隠したことでしょう。
 『三成最後の賭け』では、通説とは違った視点で三成の生涯を追い、何があっても生き抜こうとした三成の心境を解き明かしていきます。当時の出来事についても、歴史書とはまるで違った解釈が展開されています。果たして、著者の解釈が妥当かどうか。判定を下しながら読まれると、より楽しめると思います。
 本書が扱う戦乱は400年以上前の出来事ですが、今日に通じる問題でもあります。いま世界、とくにアジアの緊張は高まっています。絶対的権力者が君臨する無法国家によって軍事的脅威に曝されるなか、自国を守るには何が必要か。そういう問いを、著者は投げかけています。平和は他人任せでは保てません。ぜひ、あなたご自身で答えを見つけていただきたいテーマです。

夢をかたちに

 県議会議員の役目は滋賀県の発展につながる政策の立案、推進が第一であるのは言うまでもありませんが、県民の皆様一人一人の夢の実現にお力添えしていく日々の活動も大事だ、と私は考えております。その一例として、彦根在住の作家さんとの交流をご紹介させていただきました。
 最後に矢的さんご自身の言葉も掲載しておきます。併せてお読みください。

──矢的竜でございます。
 このたび細江様より格別のご支援を賜り、新刊を発売することができました。  縁あって彦根に居を構え、毎日のように佐和山を眺めて暮らす歴史時代小説家としては、三成を書かずに済ますことはできません。とはいえ世に溢れる三成像はダーティイメージが強すぎて、その鎧を脱がすのに時間がかかりました。彦根に転居して六年目に、ようやく完成した作品です。この本が多少なりとも彦根の発展につながればと願っております。どうかご支援のほど、謹んでお願い申し上げます。──

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『三成最後の賭け』(新潮社)

矢的竜著 1,836円(税込)
発売日:2018/03/22
四六判変型・256ページ
ISBN978-4-10-351681-1

矢的竜 PROFILE

1948年、京都府生まれ。彦根市在住。滋賀大学経済学部卒。歴史時代小説作家。『女花火師伝』で歴史群像大賞優秀賞を受賞したほか、『花火』『舞い上がる島』『不切方形一枚折り』でも幾多の文学賞に輝いた。
『大江戸 女花火師伝』『折り紙大名』『あっぱれ町奉行 江戸を駆ける』『シーボルトの駱駝』『光秀の影武者』等、著書多数。

三成ファンの一人として 寄稿 石田三成研究家 田附清子さん

 実在の人物を主人公に歴史時代小説を書くということは意外と難しいことだと思う。史料が残っていれば尚更、いくらフィクションとは言え、あまりの逸脱は許されない。これなどは、NHKの大河ドラマを見ていればわかることで、少しでも史実の解釈を間違えると、時代考証の先生宛に膨大なクレームが届くらしい。だからと言って、年表に記載されている事がらをただ並べただけでは、全くもって面白くない。時系列に並ぶ年表の隙間を埋めるものは何か。それはもう、作家さんの取捨選択と妄想(想像ではなくあえて妄想とする)、そして、筆致に委ねるしかないのである。
 さて、今回、彦根在住歴史時代作家の矢的竜さんが「三成の長編を書いた」ということを細江さんから伺った。昨年は司馬遼太郎さんの小説『関ヶ原』が映画化され、岡田准一さんがまっすぐ過ぎるがゆえに苦悩する三成を熱演した。大河ドラマ『真田丸』では、山本耕史さんが冷静さと激しさを併せ持つ三成を見せてくれた。矢的さんの描く三成は、いったいどんな三成なのだろう……。期待と不安をないまぜにして、ご著書『三成最後の賭け』の表紙をめくった。多分、読まれた方は私と同じように、この小説の始まり方に少し驚き、三成の最期を知っていればこそ、この最初の章が大きな伏線になっていることに気づかれるだろう。後に佞臣(ねいしん)と呼ばれることになろうとも、精一杯己の人生を生き抜いた三成に清々しさを感じた。

## 環境負荷の少ない滋賀へ向けて —着実にできることの提案—
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「うみのこ」は小学5年生が順次乗船し、全員が体験学習する、琵琶湖を有する滋賀県特有の事業です。過去2年の平均稼働日数は193日、航海時間は1,158.5時間、燃料の軽油消費量は約22万(新船は約28万)リットルです。燃料の軽油にBDFが10%混入されています。私は、「滋賀県低炭素社会づくりの推進に関する条例」の主旨から、カーボンニュートラルのBDF100%にしてはどうかと考えています。

 私が県議会に出させていただいた年にできた条例の一つに「滋賀県低炭素社会づくりの推進に関する条例」がありました。地球で生存していくために地球温暖化対策は世界規模で足並みをそろえて取り組んでいく必要があるからです。
 低炭素社会を目ざすことの必要性は今や皆さん同じ思いでしょうが、国レベルで目ざすこと、事業者や地域でやること、そして各人が心がけて果たせること、さまざまに分かれると思います。
 そこで、平成23年11月定例会、27年6月、11月定例会議などの議論を踏まえて、2月定例会議ではCO2の減量を図る効果と環境保全への想いから、BDFの普及と廃食用油(UCオイル)の回収量を増やすことを念頭に議論をさせていただきました。資料として、環境省 一般廃棄物処理 実態調査結果、処理状況 各都道府県別データの滋賀県集計結果(ごみ処理状況)中、資源化量内訳シートに、ごみ総排出量を挿入したエクセルシートを用意しました。
 私は議員にならせていただくまでは、家業である小売業に身を置いておりました。これらの業界では、大手が供給する既存の商品やサービスでは満足できない消費者ニーズが存在し、これらの総体がニッチ市場といわれております。この市場は絶対数が少なく、潜在的で、誰も産業としては考えつきませんし、既存の手法では収益性も悪く、市場としての魅力がありません。大企業が手をつけないこの分野で、ニッチにうまく取り組めば、立派な産業になってきます。装置や仕組みの変革によりまだまだこのニッチ産業は生まれてくると思います。

  • 平成30年1月16日付け日経新聞京滋版の記事です。「エネルギー地産地消に力」との見出しで、「JR琵琶湖線草津駅前で進む北中西・栄町地区の再開発事業。稼働する重機の燃料はバイオディーゼル燃料(BDF)だ。油藤商事が草津市民から天ぷら油の廃油を集めてBDFに精製し、事業主体の西松建設に供給している。」と工事現場の写真入りで掲載されていました。このように民間レベルでも意識は高まっているのですが、このことについて知事の感想をお伺いしました。
  • 琵琶湖の周り(滋賀県)で集めた廃食用油をBDFに変え、「うみのこ」を航行することに、環境学習としても大きな意義があると思っています。基本的な考えとして、ディーゼルエンジンをBDFで動かせばSDGs(持続可能な開発目標)の理念にも適合していると考えていますので、知事にBDFの取り組みについてあるべき姿をどのように認識されているかを問いました。
  • 廃食用油のBDF(バイオディーゼル燃料)化をさらに進める仕組みを構築してほしいと思っています。現在の廃食用油の回収量より増量できる可能性が十分にあると考えています。廃食用油の回収量が伸びないのは何がネックになっているのか、知事にBDFのエネルギー利用を促進する観点から、BDFの用途拡大についてどのように考えられておられるのか、廃食用油の回収は一般廃棄物として市町の仕事となっていますが、油藤商事や菜の花プロジェクトのような取り組みが拡大するように県として取り組んでいただけないかを問いました。

 廃食用油の回収からBDFの活用まで一連の取り組みが県内においても拡大していくよう、県としても支援に努めなければなりません。
 私たち議員は議論し、国でやるべきことについては国へ働きかけ、私たちの手で解決できると考えられるものについては即実践していくべきだと考えます。

一問一答

  • 「エネルギー地産地消に力」の記事についての感想を問う。
  • BDFの取り組みについてあるべき姿をどのように認識されているか。
  • 「うみのこ」は燃料の軽油にBDFを10%混入するという指示だが、その理由は何か伺う。
  • 「滋賀県低炭素社会づくりの推進に関する条例」の主旨からすれば、「うみのこ」の燃料をカーボンニュートラルのBDF100%にしてはどうか伺う。
  • 廃食用油(UCオイル)の回収への取り組みは県内でもバラツキがあるが他府県等の先進事例を問う。
  • ディーゼルエンジン自動車では軽油に5%混入が認められているが、品質の報告を義務付けされていると聞く。品質検査機関はどこか。
  • 滋賀県の廃食用油の回収量は近年どのくらいと認識されているか。
  • 5年前と比較して廃棄物回収量や廃食用油の回収量の増減はどのように認識されているか。
  • 現在の廃食用油(UCオイル)の回収量より、増量の可能性があると考える。廃食用油の回収が伸びないのは何がネックと認識されているか。
  • エネルギー利用を促進する観点から、BDFの用途拡大についてどのように考えるか。
  • 琵琶湖の周り(滋賀県)で集めた廃食用油(UCオイル)をBDFに変え、「うみのこ」を航行することに、環境学習としても大きな意義があると思うが、知事の考えを伺う。
  • 廃食用油(UCオイル)は一般廃棄物として市町の仕事となっているが、取り組みが拡大するよう県として取り組まないか知事に問う。

質問についての詳細は、滋賀県議会公式サイトをご覧ください

視察レポート

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広島県防災航空センター(広島県三原市)にて

 県議会では提案された議案を審査するだけでなく、委員会のテーマに合致する課題などの調査に県内各地各施設などへ出向きます。また県外の先進事例など参考とすべき事項などについても調査研究するために常任委員会では2泊3日程度、特別委委員会では1泊2日の県外調査に出かけます。

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