想うことなど……

春爛漫

2014.04.16

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 春爛漫……、今頃は彦根城域で約1200本の桜が咲き誇っている頃でしょう。
 彦根がまだ彦根町だった頃の話です。吉田繁治郎というひとがいました。
 「古い城下町の味をたいせつにし、大きく伸びる町にするには、観光の町として発展させていくのが、いちばんよいのではないだろうか。彦根城一帯に桜の木を植えて、桜の彦根城にしよう。」昭和8年、46歳の繁治郎氏は彦根の将来について、こんな夢をえがきました。繁治郎氏は、桜の苗木を買うための寄付金を集め、ソメイヨシノの苗木、1000本を買い入れて植えはじめたのでした。天守近く、内濠の土手、金亀公園、外濠の道ばた、旧港湾沿いや芹川の土手にも苗木を植えたといいます。
 彦根町は昭和12年彦根市となり、「桜の彦根城」を観光の名所として全国に宣伝します。そして、昭和28年、桜を植えることを思い立ってから20年、永年の努力が認められ彦根観光協会から繁次郎氏は表彰を受けました。
 ところで、ソメイヨシノの寿命は60年〜70年といわれます。国宝や重要文化財の指定を受けた彦根城内では、土を掘り返して新芽を植え替えることは難しく、市民団体「ひこね桜守」(代表山内勉氏)は、2004年より花が咲く前と咲いた後に肥料をやることと、テングス病などの病気を早期に発見して、樹医と一緒に治療しています。現在も、彦根市文化財課・レイカディア大学の方々と共に「ひこね桜守」の運動を続けています。
 彦根城の世界遺産登録を無理だからと最初から諦めている人に出会うこともありますが、繁治郎氏の桜、ひこね桜守、彦根を映画で盛り上げる会の活動のように、夢を諦めない人々のボランティアによって、現在の彦根があります。私は、諦めるのではなく、まず、皆で取り組む勇気が世界遺産登録にも必要なのではないかなと想っています。