ニューズレター

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2017年7月30日発行

地域で支えるデマンドタクシー

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彦根市内を走るショッピングセンターコミュニティバス「南彦根ベルロード線」(彦根市都市建設部交通対策課提供)

 6月議会において「地域における持続可能な公共交通のあり方について」と題し、質問をしました。今回は地域交通に絞り込み、特に交通不便地の公共交通について議論をさせていただきました。
 彦根市や犬上郡、東近江市には交通の不便な地域が存在します。人口減少が続く地方都市において公共交通の不便地域は広がり続け、買い物や通院などに必要な移動手段をどのように確保するのか、地域社会を維持するために避けられない課題となっています。
 過日その交通不便地にお住まいの方々の集まりに招かれ、ご挨拶する機会がありました。某新聞の特集に「コミュニティバス倍増」との見出しで社会面と地域版の連動で掲載があったことから、「地域の人々が自分たちで運営するコミュニティバス」のお話をしたところ、とても関心が高いことを知りました。
 周知のように、コミュニティバスは、地域住民の移動手段を確保するため交通事業者に代わり、自治体が関わって走らせているバスのことです。赤字が出れば税金で補填することで成り立ち、自治体の財政負担の増大を招くことになります。このような状況の中で、財政負担の軽減と交通空白地における住民の移動手段確保のため、デマンド型交通を検討する自治体が増えています。
 デマンド型交通は、決まった路線を運行するバスでは無駄が多いことから、一般的に予約をして迎えに来てもらう方式を言います。様々な形式があり、彦根市の「愛のりタクシー」は予め定められた路線を運行する「路線運行方式」、米原市の「まいちゃん号」は運行エリアの中に設定された停留所間を結ぶ「エリア運行方式」です。また、「利用できる者の範囲」も、利用者を「市民に限定しているもの」「市民の中でも、高齢者や運転免許を持たない方に限定しているもの」「市民以外も利用できるもの」など、各市町でさまざまな運行形態があります。

 県は、地域のバスやデマンドタクシーへの補助事業として今年度予算で2億3000万円を計上していますが、市町が支えるバス交通の現状は、多くの路線が多額の欠損を抱え、県からの補助金の充当率は下がる一方となっています。自治体の厳しい財政状況を考えると、自治体補填型の方式では、将来支えきれなくなる事態が危惧されます。
 私は、現状のデマンド型交通を一歩推し進め、交通不便地の交通弱者に対する移動サービスとして、『地域の人々によるデマンド型乗合タクシー』運行が持続可能な公共交通として有効だと考えています。ドア・ツー・ドア送迎を行うタクシーのような利便性と、バスのような乗合・低料金の移動サービスです。
 道路運送法第78条において、NPO法人等による自家用有償旅客運送の例外が認められています。「公共交通空白地有償運送の登録に関する処理方針」には、「鉄道や路線バス、コミュニティバスが運行しておらず、タクシー等の公共交通機関によって住民に対する十分な輸送サービスが確保できないと認められる場合」と定められ、市町が主宰する「運営協議会」における関係者間での協議・合意により、自家用有償旅客運送が可能になります。
 滋賀県には交通空白地は存在しませんから、コミュニティバスやデマンドタクシーは「運ぶことを業務」としている緑ナンバー(営業車)です。交通不便地を協議・合意により交通空白地として、自家用車(白ナンバー)を活用した有償運送によるデマンド型乗合タクシーを走らせる。これは地域が支え合う公共交通の可能性をみることができます。交通事業者や行政が主体としてではなく、事業者・行政・地域が協力して相互に支えながら取り組んでいかなければなりません。
 実は、公共交通の問題は中山間地域の交通不便地に限ったことではなく、都市部においても買い物や通院などに不便を感じる交通弱者もますます増える傾向にあります。
 私は、「デマンド型乗合タクシー研究と実現」を、地域が支え合う新しい公共交通の仕組みづくりとして捉え、その実現に向けて根気よく取り組んでいきたいと思います。

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