想うことなど……

地域力について

2006.12.04

最近、友人から聞いた話ですが、昨今、妖怪がブームらしいです。
過去にも、室町時代、江戸時代とブームがあって、どうやら人々の豊かさと関係があるようです。
昭和30年代から40年代にかけての高度成長期にも妖怪や怪獣のブームがあり、当時の漫画やTVで育った人々が、平成の妖怪ブームの担い手ということになります。時代の進歩への警鐘を鳴らしているようにも思えます。進歩の速度、進化の方向を、妖怪という共有するニュアンスで補正しようとしているかのようでもあります。人々が、「このままでは、何かちょっと違うぞ」と想った時、妖怪は現れるのかもしれません。

昔、犬上郡多賀町萱原に「二丈坊(にじょうぼう)」という妖怪がいたと聞きます。身の丈6メートルのお坊様です。
「ほんなことしてると二丈ボンが来よるほん」。もっぱら子供達が叱られる時にこの妖怪は登場しました。永源寺辺りでは、「山を越えて二丈坊が来よるで」と言って脅かすそうです。大人は二丈ボンの威厳を都合良く借り、子ども達もまた見たこともない妖怪に都合良く守られていました。怒ったり、叱ったりするのではありません。気をつけて、注意して、丈夫に育て、立派に育てと願いを込めたフレーズなのです。

「二丈ボンが来よるほん」。そこには地域のルールがあったはずです。ご近所の子ども達も、「二丈ボンが来よるほん」と叱ることもできる。子ども達だって「二丈ボン」が来るなんてことは誰も思っていないに違いありませんが、ルールに気づくことになるのです。
妖怪の復活を望んでいるのではありません。地域の持つ力は、日常の中で育まれるもので、目に見えるものではないのです。
ルールから逸脱する境目で、二丈坊が登場するように、その境目を見極める地域の眼差しを取り戻したいと思います。そのための妖怪ブームなら歓迎です。