ニューズレター

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2020年12月13日発行

新型コロナウイルス感染拡大の収束を願って……

 今秋、10月18日に、私(細江正人)の滋賀県議会第100代議長就任祝賀会を、日頃からご支援を戴いておりますみなさまに計画していただきましたが、コロナ禍の昨今の情勢から祝賀会は断念せざるを得ませんでした。中止のお知らせに、コロナ退散を願い「角大師」の護符を同封させていただきました。新型コロナウイルスの感染が広がるなか、元三慈恵大師良源(がんざんじえたいしりょうげん)に注目が集まっていました。  

角大師

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吉田慈敬住職と細江正人

 門前に貼られた「角大師」の護符は、誰もが一度は見たことがあるに違いありません。角大師は良源が鬼に変化されたお姿です。
 平安時代、全国で疫病が流行した永観2年(984)、良源は人々が苦しんでいる姿を憂い、一刻も早く救いたいと、夜叉神となり、その姿を弟子に写し取らせ、版木に彫って刷り、疫病退散の護符として配布しました。
 護符を戸口に貼ると、疫病神は恐れをなし寄り付かず、病気に罹った人々も全快し、疫病も消え失せたと伝わります。以来、角大師の護符は疫病はもとより厄災をも除くと信仰を集めるようになりました。
 良源は、近江国浅井郡三川(現:長浜市三川町)の生まれで、幼名を観音丸(日吉丸とも)といいました。12歳で比叡山に登り修行し、17歳のとき出家得度して良源を名乗ります。55歳の時に第18代天台座主(天台宗の最高責任者)となり、正月三日に入寂(74歳)されたので、元三大師とも呼ばれるようになりました。「慈恵」は朝廷から賜った諡号(しごう)です。良源は、天皇家や摂関家の篤い帰依を受け、比叡山の経済的基盤の確立や、荒廃した堂塔の再建、学問の振興、法儀の復興を図り、延暦寺中興の祖と崇められています。

玉泉寺(長浜市三川町)

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栄光山玉泉寺

 「栄光山玉泉寺」は良源が天台座主となった後(平安時代後期)、生誕地に母への孝養として建立したお寺です。盛時には三塔・五大寺・四十八院・七十坊を誇りましたが、天正元年(1573)織田信長の浅井攻めの際に全山を焼失。その後、豊臣秀吉公、徳川家康公の仏法興隆の命を受け、元三大師の再来といわれた慈眼大師天海大僧正の庇護のもと、「大師堂玉泉寺」として再建がなされました。
 彦根藩第10代井伊直幸公は、安永年間(1772〜1781)、七間四面の重層入母屋造として大師堂(現:本堂)の大改修を行っています。
 本尊の「木像慈恵大師坐像」(秘仏)は、鎌倉時代の作とされ、国の重要文化財に指定されています。地元では、母の看病のため里帰りをしていた良源が、比叡山へ戻る自分の身代りに自ら刻んだものと伝えています。

コロナ禍での出会い

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「角大師」の護符

 「角大師」の護符をいただくため、私は初めて玉泉寺を訪れ、吉田慈敬住職とお出会いすることができました。ご住職は新型コロナウイルスの感染が広がる中、「疫神病除」と記された珍しい護符を復刻しておられました。
 護符には、夜叉神になった大師の姿、「疫神病除」の文字と軍荼利明王の種子(しゅじ:仏教の諸尊を梵字一文字で表したもの)「ウン」が刷られています。角大師の姿は、寺ごとに独自の版木がありますが、「疫神病除」と「種子」が記されているのは、延暦寺大林院の護符だけです。今出川行雲大僧正から吉田慈敬住職が護符を譲り受け、復刻が実現したのだといいます。
 「『人にうつさない、自身もかからない』という病に立ち向かう気持ちを強くもってほしい。そして、四恩への感謝の念を大切に」と吉田住職はお話になりました。四恩とは、神仏・祖先・衆生・天地への日々の感謝をいいます。四恩に感謝することで、生き方暮らし方も定まり、気持ちを強く持つことができるのでしょう。良源の母への孝養にも学ばなければなりません。そういう気持ち、生き方の結果として「成就」があるのだと思います。  

収束を願って……

 『感染列島』(2008年)という映画があります。新型ウイルスが原因で起こる感染拡大の恐怖と闘う人々、医療現場の最前線を描いた話です。映画のなかで、WHOから派遣されたメディカル・オフィサーの小林栄子(檀れい)が「たとえ明日、地球が滅びるとも、今日君は林檎の木を植える」という言葉を残し亡くなります。
 今、最も美しい言葉かもしれません。
 社会にそして自分自身に何ができるか。その先に「ビルド・バック・ベター(より良い復興)」と呼ばれる新たな世界があってほしいと願っています。
 2020年師走、この一瞬もご尽力いただいております医療従事者のみなさまに感謝するとともに、コロナ禍により人生が大きく変わってしまったみなさまにお見舞い申し上げます。来年は、今年よりも安全・安心な年になるよう、議会の場にて私は林檎の木を植え続けたいと思います。

議会運営委員会広島県議会調査報告

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写真(左) 細江正人・(右)富田博明副議長

 新型コロナウイルス感染症拡大を予防する生活様式を取り入れた「ニューノーマル(新しい社会)」を目指し、テレワーク、Web会議、クラウドによるリモート化、キャッシュレス化、EC(ネット通販)、在宅での医療・介護サービスや薬の宅配サービス、教育分野でも自宅学習用アプリなど急速にデジタル化が進みました。
 滋賀県議会も従来以上にその機能を充実強化していく必要があります。生田邦夫前議長が議会のペーパーレス化に向けた取り組みを提唱され、改めて「議会改革検討委員会」を立ち上げたところまでは細江正人ニュースレター25号でお知らせしたところです。第2次議会改革検討委員会は8月3日に議長(私)に対して「ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)活用によるペーパーレス化の推進」について答申があり、滋賀県議会においてもタブレット端末等の導入に向けた議論が加速しました。ICT活用により議会の議論が効率よく一層深まることが一番求められるところでしょう。
 令和2年9月3日、「議会運営委員会」では、タブレット端末導入により議会制度のさらなる改善や運営面での一層の充実に向け、ICTを活用した議会運営において先進的な広島県議会を訪ねました。
 広島県議会では全ての議員にノートパソコンを貸与し、個々の議員は私的なパソコンとは別扱いにし、通信費など私的使用との区別を厳格にすることや、県庁のサーバーのセキュリティ問題などについて知見を得ることができました。  

ニューノーマル時代の議員

 タブレット端末導入によるペーパーレス化は議会DX(デジタルトランスフォーメーション)の始まりにすぎません。民間企業のデジタル環境と比べれば議会のDXは遅れていると言わざるを得ません。前号でも書きましたが、キーボードやマウスの操作、メールの受信・送信は、最低限のリテラシーです。Word・Excel・PowerPointの操作は、企画書の作成やプレゼンテーションに必要です。  5月27日、参院本会議において改正国家戦略特区法が可決されました。これによりAIやビッグデータなど先端技術を活用した「スーパーシティ構想」が始動し、移動、物流、医療、教育などあらゆる分野の先端技術を組み合わせ、10年後の未来社会の生活を実現することになります。  タブレット端末導入によるペーパーレス化の推進は、ICTによる課題解決のスタートラインでしかありません。費用対効果のコストパフォーマンスを吟味し、その活用を設計していかねばなりません。「議会DXのための議案を議論し判断できる資質を有している」こと……ニューノーマル時代の議員のスタンダードです。

城下町の道路事情

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国道306号線バイパス トンネル工事

 滋賀県と彦根市は、2024年に世界遺産登録を目指しており、2025年には国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会も控えております。現在、特に観光シーズンにおける市内の交通渋滞は市民生活もままならない状況です。
 国道8号線バイパスは計画から50余年を経て、平成28年に近畿地方整備局の第1回近畿地方小委員会で協議がスタート。その後、各種意見聴取やルート案の検討が行われ、ルート案3案の内、ようやく第2案の山側ルートが対応方針案に決定されました。国道306号線バイパスは、国民スポーツ大会開催に向けて、彦根カントリー倶楽部の下をトンネルで貫通し、彦根インターチェンジ付近まで結ぶ工事が着工しました。

 トンネル工事は、平成30年12月20日入札の結果、戸田・昭建・金子建設共同企業体が49億7642万円余で落札して契約に至りました。追加費用による変更契約は表のとおりです。
 この工事については次々と設計の見直しがあり、何度も補正予算の提案や専決処分されてきましたが、令和2年6月定例会議に9億5529万円と多額の補正予算が提出されました。そもそもトンネル工事は掘ってみないと分からないこともあるとのことで、今回は掘削時の崩落と、それに伴う地表面の沈下を防止するなどの安全対策、破砕帯において基準値を超えるヒ素を含む土砂が発生するものとされていましたが、トンネルの屈伸に伴い破砕帯以外からも基準値を超える重金属含有土が発生することが判明したことから設計変更し補正予算を提案されたものでした。この時点では原町交差点側から200メートル進んだ地点でのことです。
 この先は設計変更の必要な事態の起こらないことと工事関係者のご無事を祈りますとともに、古来より交通の要衝である佐和山など東山一体を寺領とする清凉寺様のご理解ご協力に感謝します。
 トンネルが完成すれば、主会場への重要なアクセス道路となります。インフラ整備は一朝一夕に進むものではありません。現状のインフラで、どうすれば極力渋滞を避けられるのか、そして彦根に住むアクティブな高齢者の方がどうやって市内、市外に移動できるようにするのか。
 ヨーロッパでは車の乗り入れを規制して、人が歩くまちに転換し、賑わいを取り戻した都市があります。健康で安全で「安心できる交通システム」「環境に優しく持続可能な彦根のまちづくり」を自動車を優先するのではなく、暮らしや歩行者を最優先する視点で考えていかなければなりません。  自転車道路の整備・道路の一方通行制の導入、ICT(MaaS)の活用など、議員として学びはまだまだ続きそうです。

琵琶湖博物館リニューアルオープン

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 新型コロナウイルス感染症対策のため、延期になっていた博物館のリニューアル工事が完了しました。10月10日(土)にグランドオープンの式典があり、列席させていただきました。
 琵琶湖博物館は、「湖と人間」というテーマで自然と文化を扱う総合博物館であり、全国でも珍しい淡水専門の水族展示室を持つ日本最大級の施設です。平成8年10月に開館して以来、1,100万人以上の人々が来館しています。リニューアルは社会状況や環境に関する価値観の変化や県民のニーズに伴い、平成27年度から令和2年度までの3期6年の歳月をかけて行われてきました。今回、「A展示室」と「B展示室」がリニューアルされ、テーマである「湖と人間」を過去から現在、未来を考えることができる素晴らしい展示になりました。

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 特に化石巨大象の左半分を生体復元に、右半分を骨格復元という世界初の半骨半身の展示となり、琵琶湖博物館の新たなシンボルとして、みなさまに愛される存在になるでしょう。また、タテヨコの縮尺を変え琵琶湖の深さを広さの5倍にして湖水と堆積土砂をくり抜いて本来の琵琶湖の深い湖底を見せている立体模型は興味深く観させていただきました。
 今後も、来館者のみなさまにとって琵琶湖の価値や魅力を感じる場であるとともに、湖と人間が共存する持続可能な社会の実現に向けた次代を担う人が育つ場となるよう、琵琶湖博物館のさらなる発展に、関係者のみなさま方のなお一層のご尽力をお願い申し上げる次第でございます。

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